睡眠時無呼吸症候群
目覚めが悪く日中も強い眠気を感じて集中力が続かない、といった症状は睡眠中に繰り返し呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」の可能性があります。放置すると日常生活に支障をきたす恐れがあるため、適切な診断や治療が必要です。
発症のメカニズムと症状
睡眠時無呼吸症候群とは、様々な要因で空気の通り道である上気道が狭くなり、10秒以上に渡って呼吸が止まる状態をいいます。特徴としては、イビキが突然止まると同時に無呼吸になり、しばらくすると大きなイビキとともに呼吸が戻ります。この繰り返しが深い眠りを妨げ、起床時に倦怠感として体に現れるといわれています。
完全に無呼吸状態になる場合と、換気量が半分以下になる低呼吸に分類されますが、いずれも就寝中であるため自覚がなく、日中に強い眠気を感じる事で気づくケースも少なくありません。
罹りやすい人の特徴とは
睡眠時無呼吸症候群は太っている人に多いと思われがちですが、次のような特徴のある人にも注意が必要です。
- 首が短い
- 首回りが太く脂肪が付いている
- 下顎が小さい、または後退している
- 舌、扁桃が肥大している
- 歯並びが悪い
- 鼻炎、鼻中隔湾曲による鼻づまりがある
- 高血圧・糖尿病・高脂血症の既往がある
- 加齢による口周りの筋肉が衰えている
また、それらの特徴のなかには生活習慣が影響しているケースもあります。
- 晩酌の習慣があり、アルコールによって筋肉が緩み気道が狭まっている
- 暴飲暴食による肥満により首に脂肪が付いている
- 喫煙による鼻粘膜、扁桃が炎症している
- 仰向けに寝る習慣がある
検査と診断について
まずは問診により、眠気の症状やイビキの有無、既往歴などから判断し、疑わしい場合は、自宅でできる簡易検査、または医療機関に1泊入院して受ける睡眠ポリグラフ検査で睡眠中の呼吸を診断します。
簡易検査では、睡眠時の無呼吸や低呼吸による低酸素状態を把握します。一方、睡眠ポリグラフ検査では、脳波により眠りの深さを測定することができるため、より精密な診断が必要な場合に有効といわれています。
治療法の紹介
一般的には、経鼻的持続陽圧呼吸療法と呼ばれる治療法を行います。これは、睡眠中の無呼吸状態を防ぐため、鼻に装着したマスクから持続的に空気を送り、気道を広げる治療法です。
その他にも、下顎を上顎より前に固定するマウスピースを装着することで、上気道を広く維持する方法もあります。程度によって治療法も異なるため、まずは正確な診断が重要です。
日常生活における注意点
睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣の見直しによって症状が軽減されるケースもあります。肥満が原因の場合、食生活や適度な運動を心がけることが喉の内側や首回りに付いた脂肪を落とし、イビキの改善に繋がるといわれています。
また、就寝前の飲酒はイビキを招き、眠りの質を下げる恐れがあるため、量やタイミングにも配慮が必要です。タバコも同様に、鼻や喉の炎症を引き起こして気道を狭くする原因に繋がるため控えましょう。
全身に悪影響を及ぼす可能性も
本来、睡眠中はリラックスした状態で血圧も下がっていますが、睡眠時無呼吸症候群の人は、寝ている間も無呼吸を回避するため脳が刺激され、眠りは浅くなり、血圧が上昇しやすくなると考えられます。これが、無呼吸の人に高血圧が多いといわれる理由のひとつです。
また、睡眠不足はホルモンバランスの乱れを招き、太りやすい傾向にあります。
健康維持には、質の良い睡眠が不可欠です。もし、眠気や疲労が気になる場合は、早めに専門医を受診しましょう。